vol.2|3 年をかけて生まれた「みかんミンチ」


さて、季節もので水分が多いみかんを、どうやってお菓子に生かそうか。細かくして冷凍保存すれば、日持ちのする焼き菓子の素材になるかもしれない。
そう思いめぐらせていたある日、東京の加工業者の社長である越山さんがMiki を訪ねてきました。
これはグッドタイミング!と相談したところ、やはりみかんは扱いがむずかしいとのこと。
ところが翌日、「とりあえず試作してみるので、みかんを10kg送ってもらえませんか」と越山さんからお電話をいただいたのです。
すぐに的場農園さんにお願いをして、送ってもらったみかんは100kg。
依頼よりもはるかに大量のみかんを前にして、とまどう越山さん。「これはどうにかしないと」と心に決めた越山さんの、暗中模索とも言える研究がはじまりました。

皮をしっかり洗い、まるごと冷凍して、細かくミンチ状にする。
そのあいだに、みかん本来のおいしさや食感がどんどん損なわれてしまいます。
使ったみかんは計500kg。かかった年数は約3 年。技術開発と試作を何度も重ねて、ようやくマーマレードのように濃密な「みかんミンチ」が完成しました。

こうして、みかんの原料化にはなんとか成功しましたが、洋菓子は風味が命。
「みかんミンチ」は味や食感の鍵にはなるものの、それだけでは香りが足りないのです。
本来、みかんは香りが弱いもの。でも「つくりもの」の香りはつけたくない。
「本物のみかんの香り」を求めて向かった先、それは和歌山から遠く離れた、鹿児島県の桜島でした。